もちろんです😊
エリック・S・レイモンド(Eric S. Raymond、通称ESR)の**『How To Ask Questions The Smart Way(賢い質問の仕方)』**は、プログラマーなら一度は名前を聞く「伝説の文章」です。実は「質問マナー集」というより、オープンソース文化の哲学書なんです。
まず、エリック・レイモンドって誰?
ESRはLinuxやUNIX文化を広めた有名なハッカーです。
特に有名なのは、
- 『The Cathedral and the Bazaar(伽藍とバザール)』
- オープンソース運動の理論家
- Linuxコミュニティのご意見番
伽藍とバザール: オープンソース・ソフトLinuxマニフェス
という肩書きがあります。
「Linuxが世界中に広がった理由」を説明した人物の一人でもあります。
この文章が書かれた時代背景
1990年代後半。
当時は
- Stack Overflowなし
- GitHubなし
- Discordなし
- ChatGPTなんて当然ない
質問する場所は
- メーリングリスト
- IRC
- Usenet
でした。
世界中の有名プログラマーに直接メールが届く世界です。
つまり
「この人、本当に調べたの?」
という質問が毎日何百件も来ていたわけです。
そこでESRが
「ちゃんと質問すれば、ちゃんと答えてもらえるよ」
とまとめたのがこの文章です。
実は「礼儀」ではない
多くの人が誤解しています。
これは
「礼儀正しくしましょう」
ではありません。
本質は
相手の時間を節約しよう
です。
ハッカー文化では
時間=最も貴重な資源
だからです。
一番有名な考え方
ESRは
「答えをもらう権利は最初から存在しない」
と言っています。
かなり厳しく聞こえますね。
でも裏返すと
良い質問なら喜んで答える
とも言っています。
実際、
"Good question!"
はハッカー世界では最高の褒め言葉だそうです。
業界あるある①
新人
「動きません」
ベテラン
「何が?」
新人
「エラーです」
ベテラン
「どのエラー?」
新人
「赤い文字です」
(笑)
これ、本当にあります。
良い質問は
Python 3.12
Windows11
このコードで
ValueError
この部分で発生しました。
ここまで試しました。
公式ドキュメントも読みました。
分かりません。
これだけで回答率が激増します。
「症状を書け、推測を書くな」
これも有名です。
初心者
「メモリ不足ですよね?」
違うかもしれません。
良い質問
「メモリ使用率80% CPU20% このタイミングで停止します」
こちらなら原因を推測できます。
医者でいうと
×
「風邪ですよね?」
○
「熱が39度あります」
です。
業界あるある②
プログラマーは
原因より
再現方法
が欲しい。
だから
「再現できますか?」
が最初に聞かれます。
"Google is your friend"
この文章の改訂版では
Google検索をしてから質問するよう勧めています。
今なら
Googleだけでなく
- ChatGPT
- Gemini
- Claude
- Perplexity
なども同じ役割ですね。
Stack Overflow文化
Stack OverflowにもESRの思想はかなり影響しています。
例えば
- タイトルを具体的に
- 再現コードを書く
- エラー全文を書く
- 試したことを書く
全部この文章とほぼ同じです。
「丸投げ」が嫌われる理由
例えば
Python教えて
これでは
100通り答えがあります。
でも
辞書型だけ分かりません
なら答えやすい。
つまり
質問を小さく切る。
これは今でも鉄則です。
実はAI時代でも通用する
ChatGPTでも
×
「Excel教えて」
より
○
「VLOOKUPをXLOOKUPへ置き換えたい」
の方が良い回答になります。
つまり
ESRの思想はAIにもそのまま使えます。
面白い雑学
実はこの文章、
翻訳が世界中にあります。
- 日本語
- 中国語
- フランス語
- ドイツ語
など、多数の言語に訳されています。
実は批判もある
この文章は有名な一方で、
「初心者には厳しすぎる」
という批判も昔からあります。
最近のオープンソース界隈では
「初心者歓迎」
を重視するプロジェクトも増え、
ESR流の厳しさだけではなく、「質問しやすい雰囲気づくり」も大切だという考え方が広まっています。つまり現在は、質問者にも工夫を求めつつ、回答者にも配慮を求める方向へ文化が少し変化しています。
最後に、この文章の本当の教え
一言でまとめるなら、
「相手が答えやすい質問を作ることは、自分の問題を整理することでもある。」
ということです。
だから『賢い質問の仕方』は、単なるマナー本ではありません。論理的に問題を切り分け、相手と効率よく知識を共有するための実践ガイドなのです。その考え方は、オープンソース開発だけでなく、仕事の相談、研究、そしてAIへのプロンプト作成にまで応用できる、今でも色あせない名文書と言えるでしょう。


