Rolling Stones - Paint it Black 2006 Live Video HD
ご提示いただいた動画は、ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)が2006年にニューヨークの歴史ある劇場「ビーコン・シアター(Beacon Theatre)」で行ったライヴで、伝説の特大ヒット曲『Paint It, Black(黒く塗れ!)』を演奏した映像です。
この映像は単なるライヴ記録にとどまらず、映画界の巨匠マーティン・スコセッシ監督による映画『シャイン・ア・ライト』(2008年公開)の撮影セッションという、極めて豪華な背景を持っています。音楽史・映画史双方の雑学や業界裏話を交えて解説します。
1. 映画『シャイン・ア・ライト』とスコセッシ監督の裏話
-
スコセッシ監督とストーンズの深い絆
-
マーティン・スコセッシ(『タクシードライバー』『グッドフェローズ』等)は大のストーンズ・ファンとして知られ、自身の映画の重要なシーンで何度も彼らの楽曲(『Gimme Shelter』や『Monkey Man』等)を使用してきました。そのスコセッシが満を持してストーンズ自身を主題に撮り下ろしたドキュメンタリー/ライヴ映画が『シャイン・ア・ライト』です。
-
-
名撮影監督たちを集結させた脅威の撮影体制
-
巨小な劇場空間で最高の映像を収めるため、アカデミー賞受賞歴のあるトップクラスの撮影監督(ロバート・リチャードソンなど)をはじめ、名だたる撮影クルーが何台ものカメラを配置して撮影を行いました。ミック・ジャガーの縦横無尽なステージングにカメラマンたちが翻弄されたエピソードも有名です。
-
-
クリントン元大統領の60歳誕生日チャリティ
-
このビーコン・シアターでの公演は、ビル・クリントン元米大統領の60歳を祝うファンドレイジング(資金調達)コンサートとして開催され、ゲストにもヒラリー・クリントンや各界のセレブリティが多数訪れた特別なライヴでした。
-
2. ライヴアレンジと演奏の雑学・みどころ
-
シタール音色のリフレインをギターで再構築
-
1966年の原曲スタジオ録音版では、故ブライアン・ジョーンズが演奏したインドの伝統弦楽器「シタール」の印象的なリフレインが曲の核でした。
-
ライブでは、キース・リチャーズとロン・ウッドがエレクトリック・ギターの巧みなピッキングやニュアンスであのシタール音色とフレーズを見事に再現・再現補強しており、バンド・サウンドとしての骨太さが強調されています。
-
-
チャーリー・ワッツのダイナミックなドラミング
-
『Paint It, Black』の疾走感とダークな高揚感を支えているのが、フラム(一拍に細かくドスンと叩き込む技法)を多用したチャーリー・ワッツの力強いドラムビートです。ジャズ出身のチャーリーならではの、無駄のないソリッドで完璧なタイム感が曲の緊張感を決定づけています。
-
3. 『Paint It, Black』という楽曲の文化的背景
| 項目 | 解説・エピソード |
|---|---|
| タイトル表記の謎 | 原題は『Paint It Black』ですが、1966年の初盤シングルではレコード会社の誤記により**『Paint It, Black』**(カンマ入り)と表記され、長年ファンの間で論争やネタになりました。 |
| ベトナム戦争と映画『フルメタル・ジャケット』 | 歌詞の「色をすべて黒に塗りつぶしたい」という絶望と反骨の精神は、1960年代後半のベトナム戦争下の若者たちの心情と強く同期しました。スタンリー・キューブリック監督の映画『フルメタル・ジャケット』(1987年)のエンディング曲として起用されたことで、映画史的にも不朽の名曲となっています。 |
巨匠スコセッシのカメラワークと、当時結成40年以上を経てなお圧倒的なエネルギーを放つストーンズのパフォーマンスが見事に融合した、ライヴ映像作品の最高峰のひとつです。
この動画は、ローリング・ストーンズが2006年にニューヨークのBeacon Theatre(ビーコン・シアター)で行ったライブから、「Paint It Black」を抜粋した映像です。マーティン・スコセッシ監督のコンサート映画『Shine a Light』(シャイン・ア・ライト、2008年公開)に収録されたパフォーマンスで、YouTubeでは2014年にアップロードされ、現在までに約6300万回以上視聴されています。
撮影の背景と雑学
このライブは、ストーンズの大規模ツアー「A Bigger Bang Tour」(2005-2007)の一環として、映画撮影のために特別に追加された2公演(2006年10月29日と11月1日)のものです。通常のスタジアム公演ではなく、約2800人収容の比較的親密な劇場を選んだのは、スコセッシの希望でした。当初はリオのビーチでの大規模無料コンサートをIMAX 3Dで撮る案もあったそうですが、スコセッシは「バンドの相互作用を近くで捉えたい」と主張し、Beacon Theatreに落ち着きました。
実際に映画に使われたのは主に11月1日の公演です。ミック・ジャガーが喉の不調でスケジュールがずれ、結果的にこの日になったという経緯もあります。観客にはビル・クリントン元大統領夫妻やポーランドのクワシニェフスキ元大統領など、豪華な顔ぶれが並び、クリントン財団の慈善興行としても機能していました。
スコセッシは17台以上のカメラを投入し、動くクレーンカメラを多用。ジャガーは「カメラが邪魔になる」と懸念していましたが、スコセッシは押し切り、結果的に極めてダイナミックな映像が生まれました。クローズアップが非常に近く、ジャガーの顔の皺や歯の裏側まで見えるほどの迫力です。キース・リチャーズは「カメラが回ってるなんて知らなかった。いつものようにやっただけ」と後に語っています。
「Paint It Black」のこのバージョンについて
1966年のオリジナルはシタールが印象的なラーガ・ロックですが、2006年のライブではシタールなしのストレートなロックアレンジ。ジャガー(当時63歳)の動きはまだ精力的で、キースのギター、チャーリー・ワッツのドラム、ロン・ウッドのギターがしっかりと絡み合っています。映画『Shine a Light』のサウンドトラックにも収録され、シングルディスク版・ダブルディスク版の両方に入っています。
余談ですが、この撮影期間中にアトランティック・レコードの共同創設者アーメット・エルテガンがバックステージで転倒して頭部を負傷し、その後死去。映画は彼に捧げられています。
業界的な文脈
スコセッシはキャリアを通じてストーンズの音楽を多用してきた監督で(『ミーン・ストリート』『カジノ』など)、ジャガーが「スコセッシの映画で『Gimme Shelter』が入ってないのはこれが初めてだ」と冗談を飛ばすほど。逆にスコセッシは「ストーンズの音楽が自分の映画のエネルギーやカメラワークの基盤になった」と公言しています。
この動画が6300万再生を超えているのは、公式の映画クリップが長く無料で見られる貴重なソースになっているためです。2008年のベルリン映画祭でワールドプレミアを飾り、ストーンズ本人たちもレッドカーペットに登場。コンサート映画としては比較的成功を収めましたが、スコセッシの他の作品やストーンズの他のドキュメンタリー(『Gimme Shelter』など)に比べると、意外と語られる機会が少ない「隠れた名作」的な位置づけでもあります。
総じて、60年代の名曲を40年後に、世界最高峰の映画監督が親密な劇場で捉えた、ストーンズの「今」を感じさせるライブ映像です。ジャガーのエネルギーとキースの佇まいが、歳を重ねても色褪せないロックンロールの象徴として、今も多くの人を引きつけています。



0 件のコメント:
コメントを投稿