『11人いる!』とはどんな漫画?
**『11人いる!』**は、萩尾望都が1975年に発表したSF漫画の金字塔です。
舞台は遠い未来。超難関の宇宙大学の最終試験では、本来10人一組で宇宙船に乗り込み、53日間生き延びることが課題です。
ところが、人数を数えると……
「11人いる!」
全員が「自分は受験生だ」と主張し、誰が余分な1人なのか誰にも分からない。
この謎を軸に、
- 密室ミステリー
- サスペンス
- SF
- 青春ドラマ
- 異文化交流
が見事に融合した作品になっています。
宇宙飛行士というより「宇宙士官候補生」
主人公たちは、現代でいう宇宙飛行士というより、
- NASAの宇宙飛行士
- 自衛隊の幹部候補生
- 士官学校の学生
を合わせたような存在です。
試験では
- チームワーク
- 危機管理能力
- リーダーシップ
- 判断力
が見られています。
ところが正体不明の11人目がいるため、全員がお互いを疑い始めます。
つまりこの作品は、
「宇宙船よりも人間心理の密室劇」
なのです。
本当に描きたいテーマ
この漫画で描かれるのは、
「違う文化を持つ人同士は理解し合えるのか」
というテーマです。
11人は、
- 王族
- 辺境惑星出身
- サイボーグ
- 超能力者
- 性のあり方が地球人と異なる民族
など、価値観がまるで違います。
最初は衝突ばかりですが、
命の危機を一緒に乗り越えることで信頼が生まれていきます。
これは1970年代としては非常に先進的なテーマでした。
有名な「フロル」というキャラクター
作品で特に有名なのがフロルです。
フロルの種族は、
成人するまで性別が決まっていません。
成長して初めて、
- 男になるか
- 女になるか
が決まる種族なのです。
そのため恋愛感情や性別についての描写が、とても繊細に描かれています。
今ではLGBTQやジェンダー論が広く知られていますが、1975年にこの設定を少女漫画で描いたことに、多くの評論家が驚いています。
雑学① 「11人いる!」の元ネタ
萩尾望都先生は、
宮沢賢治の『ざしき童子(ぼっこ)のはなし』
から着想を得たと語っています。
子どもが10人遊んでいたはずなのに、
数えると11人いる。
でも誰が増えたのか分からない。
この不思議な発想を、
「宇宙船の密室」
へ置き換えたそうです。
雑学② 編集者は理解できなかった?
1975年当時、
少女漫画は
- 恋愛
- 学園もの
- スポ根
が主流でした。
そこへ突然、
「宇宙船で53日間の試験」
というSFを持ち込んだため、
かなり異色だったそうです。
しかし掲載後は高い評価を受け、第21回小学館漫画賞も受賞しました。
雑学③ 漫画業界への影響
『11人いる!』は少女漫画だけでなく、
日本SF界にも大きな影響を与えました。
特に
- 「密室SF」
- 「閉鎖空間で疑心暗鬼になる集団劇」
- 「異文化交流を描くSF」
というジャンルでは、今でも古典として語られます。
後の漫画やアニメにも、
「○人いるのに1人多い」
という設定の元ネタとして名前が挙がることが少なくありません。
業界話:「少女漫画だから描けたSF」
実は1970年代当時、少年漫画ではSFは「メカ」「戦闘」が中心になりがちでした。
一方、『11人いる!』は、
- 人間関係
- 心理戦
- 恋愛
- ジェンダー
- 文化の違い
をSFの中で丁寧に描いています。
そのため、「少女漫画だからこそ生まれたSFの傑作」と評価されることが多い作品です。
😊 読み始めると「11人目は誰だ?」というミステリーに引き込まれますが、読み終える頃には「異なる価値観を持つ人とどう信頼を築くか」という深いテーマが心に残る作品です。50年以上経った今でも色あせない名作として、多くの漫画家やSFファンに読み継がれています。
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