2025年12月10日水曜日

**ラース・フォン・トリアー監督『ニンフォマニアック(Nymphomaniac, 2013)』**について

 

ニンフォマニアック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ニンフォマニアック
NYMPH()MANIAC
監督 ラース・フォン・トリアー
脚本 ラース・フォン・トリアー
原案 ラース・フォン・トリアー
出演者 シャルロット・ゲンズブール ステラン・スカルスガルド ステイシー・マーティン シャイア・ラブーフ クリスチャン・スレーター ジェイミー・ベル ユマ・サーマン ウィレム・デフォー
製作会社 ゼントロパ・エンターテインメンツ
配給 アメリカ合衆国の旗マグノリア・ピクチャーズ 日本の旗ブロードメディア・スタジオ
公開 デンマークの旗2013年12月25日 (Vol.1, Vol.2) ドイツの旗2014年2月9日 (BIFF、Vol.1ノーカット版) イタリアの旗2014年9月2日(VIFF、Vol.2ディレクターズカット版) 日本の旗2014年10月11日 (Vol.1) 日本の旗2014年11月1日 (Vol.2)
上映時間 117分 (Vol.1)、147分 (Vol.1 DC) 123分 (Vol.2)、177分 (Vol.2 DC)
製作国 デンマーク ドイツの旗 ドイツ フランスの旗 フランス ベルギーの旗 ベルギー イギリスの旗 イギリス
言語 英語
製作費 合計470万ドル(5億円)
興行収入 Box office:合計1300万ドル(13億円)
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ニンフォマニアック』(Nymphomaniac、ポスターではNYMPH()MANIAC)は2013年の二部構成のデンマーク映画ラース・フォン・トリアーが監督・脚本を務めたこの作品は[1]、2009年『アンチクライスト』、2011年『メランコリア』に続くトリアーの「鬱三部作」の最終作である。 前後編合わせて約5時間半ある『ディレクターズ・カット完全版』の前篇のプレミア上映は、2014年2月16日に第64回ベルリン映画祭で行われた[2]。 2023年には、『ディレクターズ・カット完全版』が日本の劇場で初めて公開された[3]

概要

的にむき出しのドラマであり、色情狂を自認する女ジョーの誕生から50歳までのエロスの旅をあつかう。 寒いの夜、年配の独身者セリグマンは裏路地でぶちのめされたジョーを見つける。セリグマンは彼女を家に連れ込んでケガの治療をし、彼女の人生について尋ねる。ジョーは高度にエロティックな人生についての淫欲にまみれた物語を8章にわたって語る。セリグマンは読書家でいろんな知識を持っている。彼はジョーの物語を、で読んだことに関連付けてゆく。 Vol.1とVol.2で全8章の物語が描かれ、『Vol.1』では若いジョーをステイシー・マーティンが、『Vol.2』では後半生をシャルロット・ゲンズブールが演じる。
Vol.1
  1. 「コンプリートアングラー」"The Compleat Angler"
  2. 「ジェローム」"Jerôme"
  3. 「ミセスH」 "Mrs. H"
  4. 「せん妄」"Delirium"
  5. 「リトル・オルガン・スクール」"The Little Organ School"
Vol.2
  1. 「東方教会と西方教会(サイレントダック)」"The Eastern and the Western Church (The Silent Duck)"
  2. 「鏡」"The Mirror"
  3. 「銃」"The Gun"

出演者

製作費・興収

  • 製作費:合計470万ドル(5億円)
  • 興収 (Box office):合計1300万ドル(13億円)
    • 『Vol.1』1022万ドル(10億円)
    • 『Vol.2』270万ドル(3億円)

評価

全般的にポジティブな批評が多い。 Rotten Tomatoesでは『Vol.1』が154レビューで支持率76%、点数6.9/10。 批評の総意:「暗くおかしい。恐れ知らずの大胆さ。根本的に寛容。トリアーは慣習を放棄し観客を挑発する」[5] 一方『Vol.2』には、58のレビューが集まり、10点満点中6.4点の評価がつけられた[6]。 Metacriticでは『Vol.1』64点[7]。 「カイエ・デュ・シネマ」誌が選ぶ2014年の映画トップ10では、第6位を獲得[8]

関連項目

出典

  1. ^ Jagernauth, Kevin (2012年4月25日). “Lars Von Trier's 'The Nymphomaniac' With Charlotte Gainsbourg Will Be 2 Part Film, Aiming For Cannes Premiere In 2013”. Indiewire. 2012年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年9月1日閲覧。
  2. ^ World premiere of Lars von Trier’s Long Uncut Version of Nymphomaniac Volume I”. berlinale. 2013年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月1日閲覧。
  3. ^ 「ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ2023」開催 日本劇場初公開&ディレクターズカット完全版を含む14作品 : 映画ニュース”. 映画.com. 2024年10月9日閲覧。
  4. ^ ユマ・サーマン、ラース・フォン・トリアー監督の新作に出演 - ライブドアニュース
  5. ^ Nymphomaniac: Volume I (2014)”. Rotten Tomatoes. 2014年4月3日閲覧。
  6. ^ Nymphomaniac: Volume II (2014)”. Rotten Tomatoes. 2014年4月3日閲覧。
  7. ^ Nymphomaniac: Part One”. Metacritic. 2014年2月14日閲覧。
  8. ^ “仏カイエ・デュ・シネマ誌が選ぶ2014年の映画ベスト10 5位に「風立ちぬ」”. 映画.com. (2014年12月7日) 2014年12月8日閲覧。

外部リンク

 

以下では、**ラース・フォン・トリアー監督『ニンフォマニアック(Nymphomaniac, 2013)』**について、
映画の内容・思想・制作裏話・業界小ネタをまじえて、分かりやすく解説します。


■ 1. そもそもどんな映画か?

『ニンフォマニアック』は、一言でいえば **「性依存症の女性・ジョーの人生を、彼女自身の語りとして描く“性と罪と救済”の寓話」**です。
2部構成(Vol.1 / Vol.2)で合計約4時間超、ラース・フォン・トリアーらしい挑発と寓意のフルコース。

ただし「エロ映画」と思って観ると全く違います。
むしろ 性を題材にした哲学映画です。


■ 2. なぜこんな挑発的なテーマ?

● ラース・フォン・トリアーは“挑発”が商売

彼はカンヌでの問題発言、俳優を精神的に追い詰める演出など、映画界随一の“問題児”。
業界では「映画界のルキフェル(堕天使)」などと陰口をたたかれています。

彼の映画はいつも、

  • 罪と罰

  • キリスト教的救済

  • 女性を主役にした受難劇
    というテーマが繰り返されます。

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『ドッグヴィル』と同じ精神構造が『ニンフォマニアック』にもあります。

つまり、性の物語を使って「自分は悪人なのか」「救われえるのか」を描いた宗教劇なのです。


■ 3. 作り方が…めちゃくちゃ攻めている

■ 実は「本番映像」がある

ただしこれは、
俳優の顔(シャルロット・ゲンスブール、ステイシー・マーティン)と、プロのポルノ俳優の身体を合成したもの。

VFX担当者が「ハリウッドの爆破シーンより難しかった」とコメント。
俳優本人は“本番をしていない”が、画面上はリアルに見えるという“悪魔的な技術”です。

■ 俳優たちはどう思っていた?

  • シャルロット・ゲンスブールは「トリアーとなら何でもやる」と言い切った“信者”。

  • スタントとして出演したポルノ俳優たちは「これは芸術作品だ」と意外に真面目。

  • 一方で、宣伝会社は「どう宣伝すればいいのか分からない」と頭を抱えたと言われます。


■ 4. 物語の構造:実は「聖書」や「哲学」の引用だらけ

ジョーが自分の人生(性的体験)を語り、それをスティラン・スカルスガルド演じる老人セリグマンが
神学的・文学的・哲学的に“解釈”しようとする、という構図。

彼の引用元は、

  • ユダヤ神秘主義

  • 聖パウロ書簡

  • 釣りの本

  • バッハのポリフォニー

  • 数論(素数の話)

など、完全に“トリアーの頭の中”そのもの。

映画通の間では**「世界一下ネタと学術ネタの密度が高い映画」**とも呼ばれます。


■ 5. 雑学:なんでこんなタイトル?

“Nymphomaniac” は「性欲過多の女性」という古い医学用語。

しかし、トリアーはこの言葉を、

  • 性依存

  • 自己嫌悪

  • 社会からの排除

  • 罪の自覚と告白
    のメタファーとして利用している。

実は医学界ではすでに死語ですが、映画では “女性が性を語ると社会から罰される”構造を批判するためにあえて使われています。


■ 6. 業界話:カット版・無修正版で騒動に

本作には

  • 「配給用の短いカット版(約4時間)」

  • 「ディレクターズカットの無修正版(5時間半超)」

があります。

世界の映画祭でも、国によって上映禁止・年齢規制・カット編集がバラバラで、
「国ごとの性規制を測るリトマス試験紙」とさえ言われました。

一部の国では、実は**「政治家がこっそり観に来た」**という業界裏話もあります。


■ 7. ラース・フォン・トリアーは何が描きたかったのか?

結局この映画は、

● 性の快楽の話ではない

● “罪と救済”を扱う宗教劇である

● 女の人生を語ることを社会がどう扱うか

● 「理解しようとする男性」の限界

を描いています。

特にラストは、 「女性の語りを理解したつもりの男の傲慢」を告発する
と読めるため、フェミニズムからも再評価されました。


■ 8. ちょっとした小ネタ

  • あの「ポスター(股間を写している顔アップ)」は俳優たちが自分で“イク顔”を作って撮影した。

  • マーティン役のステイシー・マーティンはこの作品で一躍注目され、ファッション界からも引っ張りだこに。

  • 劇中にある「素数の話」は、監督が数学オタクであることを示す定番の“トリアー節”。


■ まとめ

『ニンフォマニアック』は、 エロ映画の仮面をかぶった“哲学・宗教・女性心理”の超本格派アート映画です。

挑発的で過激ですが、
本質は「救われたい人間がどう生きるか」というとても普遍的なテーマを抱えています。


必要であれば、

  • ①作中の象徴解釈

  • ②Vol.1とVol.2のテーマ比較

  • ③トリアー作品の中での位置づけ

  • ④映画をより深く読むためのポイント

なども解説できます。

どの方向へ深掘りしましょうか?

『ニンフォマニアック』(原題: Nymphomaniac)は、2013年に公開されたデンマークの映画監督ラース・フォン・トリアーによるエロティック・アート映画です。この作品は、性依存の女性ジョー(Charlotte Gainsbourgが成人期を、Stacy Martinが青年期を演じる)の人生を、彼女が中年の独身男性セルリグマン(Stellan Skarsgård)に語る形で描いた2部作(Vol. IとVol. II)です。全編を通じて、ジョーの性的体験が哲学的・比喩的な対話とともに展開され、愛と欲望、嫉妬、依存、社会的疎外といったテーマを探求します。これはフォン・トリアーの「うつ病三部作」の最終作で、『アンチクライスト』(2009年)と『メランコリア』(2011年)に続くものです。全体の長さは劇場版で約4時間、ディレクターズカット版で5時間半にも及び、露骨な性描写が特徴的ですが、単なるエロティシズムではなく、芸術的な深みを追求した作品として評価されています。

Nymphomaniac's 'orgasm' posters result of von Trier's Hitler ...

プロットの概要(ネタバレを避けて)

物語は、ジョーが路地で負傷して倒れているところから始まります。彼女を助けたセルリグマンに、ジョーは自らの人生を振り返り、幼少期から50歳までの性的冒険を告白します。Vol. Iでは、ジョーの青春期の好奇心や乱交的な生活が焦点で、セルリグマンが釣りや音楽などの比喩で彼女の体験を分析します。一方、Vol. IIはより暗く、ジョーの性的危機、SM体験、家族の問題、そして自己破壊的な行動を描き、彼女の内面的な葛藤が深掘りされます。全体として、性依存の苦しみと人間の孤独をテーマに、ユーモアと挑発を交えながら進みます。

監督ラース・フォン・トリアーのスタイルと背景

フォン・トリアーは、デンマークの映画運動「ドグマ95」の共同創始者として知られ、伝統的な映画技法を拒否する革新的なスタイルで有名です。しかし、『ニンフォマニアック』ではそのルールを逸脱し、CGIや特殊効果を積極的に使用しています。彼の作品はしばしば女性の苦しみや社会批判を扱い、ミソジニー(女性嫌悪)とフェミニズムの境界を曖昧に描くことで論争を呼んでいます。この映画も例外ではなく、フォン・トリアー自身がうつ病や不安障害を抱えていた経験が反映されており、主人公ジョーの孤独感が監督の内面を投影していると言われます。業界では、彼の2011年のカンヌ映画祭での「ナチス」発言(ユーモアのつもりだったが、物議を醸し、フェスティバルから追放された)が有名で、この作品でもユダヤ人キャラクターを通じてその出来事を風刺的に触れています。 また、フォン・トリアーはインタビューを避け、映画を通じて批評家や観客に「挑発」するスタイルで知られ、この作品を「ディグレッション主義」(脱線主義)という新ジャンルと称しています。

雑学:撮影の裏側と面白いエピソード

  • セックスシーンの撮影技法: 映画の露骨な性描写は、実際のポルノ俳優のボディダブルを使い、CGIで主演俳優の顔を合成したものです。主演たちはシミュレートした演技をし、後でデジタル加工されたため、「本物のセックスシーン」として話題になりましたが、フォン・トリアーはこれを「芸術のための技術」と説明。プロデューサーのLouise Vesthによると、この方法でカンヌ映画祭の締め切りを逃すほど複雑だったそうです。 また、女性器のプロステティック(人工物)を使い、セットを厳重に閉鎖して撮影されました。
  • キャストの逸話: Shia LaBeouf(ジョーの恋人ジェローム役)は役を得るために、フォン・トリアーに本物のセックスビデオ(当時のガールフレンドとのもの)を送ったという逸話があります。 また、彼はメソッド演技で「本物のセックスをした」と主張しましたが、実際はボディダブルだったことが後で明らかになり、業界で話題に。Christian Slater(ジョーの父親役)は、役柄より若かったため、目の下にメイクでしわを入れ老けさせたそうです。 Uma Thurman(Mrs. H役)は、フォン・トリアーの「悪童」的な演出を楽しんだとインタビューで語っています。
  • 長さとバージョン: 元々1本の映画として構想されましたが、長すぎるため2部に分割。劇場版は4時間ですが、ディレクターズカットは5.5時間で、流産シーンが過激すぎて上映中に観客3人が失神したエピソードがあります。 プロモーションでは、各章の「前菜」クリップを毎月公開しましたが、一部が露骨すぎて削除されました。
  • 音楽と比喩: サウンドトラックにはRammsteinの曲やBachの音楽が使われ、セルリグマンの「フライフィッシング」の比喩は、ジョーの性体験を「釣り」に例えるユーモラスな要素。フォン・トリアーはこれを「ポルノと芸術の違い」を示すために取り入れたそうです。

業界話:論争、受賞、影響

  • 論争の嵐: 公開前から性描写の過激さで物議を醸し、米国ではNC-17(成人指定)を受けましたが、無評価でリリース。批評家からは「ミソジニーだ」と非難される一方、「女性の性的解放を描いたフェミニスト作品」と擁護される二極化。 フォン・トリアーはこれを「批評家との対話」と位置づけ、映画内でジョーとセルリグマンのやり取りを監督と批評家のメタファーとして描いています。 また、ベルリン映画祭でのプレミアではShia LaBeoufが記者会見をボイコットし、紙袋をかぶってレッドカーペットに登場した事件が業界を騒がせました。
  • 受賞と評価: ロッテン・トマトではVol. Iが76%、Vol. IIが59%の評価。 デンマークのロバート賞でベスト映画、監督、脚本など8部門受賞。Gainsbourgはボディル賞で女優賞を獲得。ノルディック・カウンシル映画賞にノミネートされました。しかし、興行収入はデンマークでわずか3,494枚のチケットしか売れず、商業的には苦戦。
  • 影響と遺産: この映画は、セックス依存のリアルな描写(例: Steve McQueenの『シェイム』との比較)で議論を呼び、X(旧Twitter)では今もファンによる議論が活発です。最近の投稿では、作品の「傑作」評価や、フォン・トリアーの他の映画とのつながりが語られています。 業界では、デジタル合成の先駆けとして語られ、ポルノとアート映画の境界を曖昧にした点で影響力大。フォン・トリアーの「女性を罰する」スタイルが批判される一方、Gainsbourgの演技が絶賛されています。

全体として、『ニンフォマニアック』はフォン・トリアーの挑発的な天才性を象徴する作品で、観る人を不快にさせつつ、深い考察を促します。もし未視聴なら、ディレクターズカットをおすすめしますが、過激な内容に注意を!

 

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