『無目的な思索の、応答。』は、無目的な思索の、応答。で、又吉直樹と武田砂鉄が、手紙の形式で思考を交わした一冊です。出版社は朝日出版社です。
この本の面白さは、「結論を急がない」ことです。
普通の対談本は、司会者が話を整理して、テーマごとに結論へ向かいます。しかし往復書簡は、相手の手紙をじっくり読んでから数日、あるいはもっと時間を置いて返事を書くため、話題が思わぬ方向へ枝分かれしていきます。「無目的」というタイトルも、その自由な思索の流れを象徴しています。
雑学① 「往復書簡」は文学の伝統
往復書簡という形式は、日本でも古くから人気があります。
例えば、
- 往復書簡のように、小説そのものが手紙だけで構成される作品もあります。
- 作家同士の書簡集では、作品以上に人柄が見えることがあり、研究資料としても価値があります。
メールやSNSでは即レスが求められますが、書簡は「考える時間」が作品の一部になるのが魅力です。
雑学② 又吉直樹らしい「考え方」
又吉さんは、小説火花でも知られていますが、エッセイや対談では「答えを出さない技術」が非常に巧みです。
芸人は笑いの「オチ」を作る職業ですが、又吉さんはむしろ途中の迷いや違和感を大切にします。そのため、武田砂鉄さんの社会的な視点と組み合わさると、「正解探し」ではなく「問いを育てる会話」になっています。
雑学③ 武田砂鉄という聞き手
武田砂鉄さんはインタビューの名手として知られています。
一般的なインタビューは「答えを引き出す」ものですが、武田さんは相手が考え続けられる質問を投げるのが特徴です。そのため、この本でも「なるほど」で終わらず、「自分ならどう考えるだろう」と読者にも思索が返ってきます。
出版業界の話
朝日出版社は、文学専門出版社というよりも、
- 語学書
- 実用書
- 教養書
- エッセイ
を数多く手掛けてきた出版社です。
出版業界では、芸人さんの本は「タレント本」とひとくくりにされることもありますが、又吉さん以降は評価が変わりました。
『火花』の芥川賞受賞以降、 「芸人だから売れる」のではなく、 「文学として成立するか」が真剣に議論されるようになったと言われています。
その流れの中で、本書のような"考えること自体を楽しむ本"も、一般読者だけでなく書店員や編集者から高く評価されました。
タイトルにも意味がある
「無目的」という言葉は、一見するとネガティブですが、この本ではむしろ創造性の源として扱われています。
心理学でも、ぼんやり考え事をしている時間(マインドワンダリング)が、新しい発想につながることがあるとされます。つまり、「役に立つことだけを考えない時間」に価値があるという考え方です。
😊 この本は、一気に読むよりも、寝る前に一往復ずつ読むような楽しみ方が向いています。二人の思考のリズムに合わせてゆっくり読むと、「答え」ではなく「考える楽しさ」を味わえる一冊です。
表紙の背景に使われているようなインクアートですね😊
このような表現には、いくつか似た技法があります。
- アルコールインクアート(Alcohol Ink Art)
- アルコールインクを専用紙などに垂らし、風やエアブロワーで広げて模様を作る技法です。
- 現代では最もよく見かけるインクアートで、本の装丁にもよく使われます。
- 墨流し(すみながし)
- 墨流し
- 日本に古くから伝わる伝統技法で、水面に墨を落として波紋を作り、その模様を紙に写し取ります。
- 「世界最古のマーブリング技法」ともいわれています。
- マーブリング(Marbling)
- マーブリング
- 水面に絵の具やインクを浮かべて模様を作り、紙などに転写する技法です。
- ヨーロッパの古い本の見返し(表紙を開いた最初の紙)によく使われています。
- フルイドアート(Fluid Art)
- アクリル絵の具などを流し込んで偶然できる模様を楽しむ技法の総称です。
この本の表紙は?
『無目的な思索の、応答。』の表紙は、見た印象ではアルコールインクアート、あるいはマーブリング風のデザインに近い雰囲気です。インクが自然ににじみ、流れ、偶然性を生かした模様になっているのが特徴ですね。
このような「偶然生まれる模様」は、本のテーマである「無目的な思索」ともよく響き合っていて、装丁としても非常に印象的です。
ちなみに、このようなインクがじわっと広がる模様は英語では Ink Art(インクアート) や Fluid Ink Art(フルイド・インクアート) と呼ばれることも多いですよ。🎨
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