いい質問です。実は、多くの人が映画やドラマの影響で勘違いしています。
結論から言うと、日本の刑事裁判では、被告人は「嘘をつきません」と宣誓しません。宣誓をするのは原則として証人です。
なぜ被告人は宣誓しないのか?
理由は、被告人には「黙秘権」があるからです。
日本国憲法と刑事訴訟法では、自分に不利なことを無理に話させられない権利が保障されています。
- 黙っていてもよい。
- 質問に答えなくてもよい。
- 話すかどうかは本人の自由。
という仕組みになっています。
そのため、被告人に「真実だけを話します」と宣誓させると、「話す自由」と矛盾してしまうため、宣誓制度は採られていません。
一方、証人は宣誓する
証人は事件の当事者ではなく、「見聞きしたことを裁判所に伝える役目」です。
そのため裁判では、
「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、何事も付け加えないことを誓います。」
という趣旨の宣誓を行います。もし故意に嘘をつけば、偽証罪に問われる可能性があります。
雑学① ドラマでよく見る「右手を挙げて宣誓」はアメリカ風
海外ドラマでは、
"I swear to tell the truth, the whole truth, and nothing but the truth."
という宣誓がおなじみです。
日本では、証人は宣誓書を読み上げ、署名などを行う方式が採られています。右手を挙げる場面は、アメリカ作品ほど一般的ではありません。
雑学② 被告人が嘘をついても「偽証罪」にはならない
これも意外な点です。
例えば被告人が、
「私はやっていません。」
と嘘を言ったとしても、それだけで偽証罪にはなりません。
「自分を守るために供述する自由」が重視されているためです。もちろん、裁判官が信用しなくなり、不利な心証につながることはありますが、「宣誓違反」として処罰されるわけではありません。
業界話
刑事裁判の実務では、被告人の話を「証言」ではなく**「供述」**と呼ぶことが多いです。
- 証人が話す → 証言
- 被告人が話す → 供述
法律家はこの言葉を厳密に使い分けています。
また、法廷では弁護士が依頼者に「嘘をついてください」と勧めることはありません。むしろ、「話したくないことは黙秘できます」「話すなら事実に基づいて話しましょう」と助言するのが通常です。
まとめ
- 被告人:宣誓しない。黙秘権があり、供述は任意。嘘を言っても偽証罪にはならない。
- 証人:宣誓する。故意に嘘を言うと偽証罪になる。
この違いは、「事件の当事者である被告人には、自分を守る権利を最大限保障する」という刑事裁判の基本原則に基づいています。
はい、そのとおりです。証人は、検察側にも弁護側にもいます。
裁判では、どちらの側も自分の主張を裏付けるために証人を呼ぶことができます。
例えば、
- 検察側証人
- 被害者
- 目撃者
- 捜査を担当した警察官
- 鑑定を行った専門家(DNA鑑定人、法医学者など)
- 弁護側証人
- 被告人の家族
- アリバイを証明する人
- 被告人の勤務先の上司
- 精神科医や心理学者などの専門家
どちらの側の証人であっても、法廷では宣誓をし、真実を述べる義務があります。 「検察側だから」「弁護側だから」といって宣誓の内容や責任が変わることはありません。
業界話
法曹界では、証人を
- 検察官請求証人
- 弁護人請求証人
という呼び方をすることがあります。「どちらが呼んだ証人か」を区別するための実務用語です。
また、証人尋問には「ホーム」と「アウェー」のような雰囲気があります。
- 呼んだ側が最初に質問するのを主尋問といい、証人が話しやすいように質問します。
- 相手方が続けて行うのが反対尋問で、証言の矛盾や信用性を厳しく検証します。
- 必要に応じて、呼んだ側が再度質問する再主尋問が行われることもあります。
雑学
法廷では、「この証人は検察側だから信用できる」「弁護側だから信用できない」という考え方はしません。
裁判官は、
- 証言に一貫性があるか
- 他の証拠と一致するか
- 利害関係はあるか
- 記憶違いや思い込みの可能性はないか
といった点を総合的に見て、証言の信用性を判断します。
そのため、弁護側が呼んだ証人の証言が裁判官に採用されることもあれば、検察側の証人の証言が信用されないこともあります。 どちらが呼んだかではなく、「証言そのものの信用性」が重視されるのが刑事裁判の基本です。
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