面白いテーマですね😊
実は、この2つの言葉は似ているようで、まったく違う文化圏から生まれ、最後に一本につながったという、とても映画的な歴史があります。
「ピアニストを殺すな(撃つな)」の始まり
有名なのは
"Don't shoot the pianist. He is doing his best." (ピアニストを撃たないで。彼は最善を尽くしている。)
という言葉です。
これは19世紀のアメリカ西部の酒場に貼られていたと言われる文句で、作家のオスカー・ワイルドが1882年のアメリカ旅行で紹介したことで世界的に知られるようになりました。
なぜピアニスト?
西部劇の酒場では、
- 酒を飲む
- ポーカー
- ケンカ
- 発砲
が日常茶飯事。
ところがピアニストは町に一人しかいない貴重な芸人でした。
つまり、
「ケンカしてもいいけど、演奏している人だけは巻き込むな!」
という、少しユーモラスな貼り紙だったわけです。
ところがフランス人が逆転させた
1956年、アメリカのハードボイルド作家デイヴィッド・グーディスの小説『Down There』がフランスで出版されます。
すると出版社が、
「Don't shoot the pianist」をひっくり返したら面白いじゃないか
と考え、
Tirez sur le pianiste! (ピアニストを撃て!)
という挑発的なタイトルを付けました。
これは内容そのものというより、
ブラックユーモアのタイトルだったのです。
そして映画へ
1960年、
フランソワ・トリュフォーが映画化。
邦題も
『ピアニストを撃て』
となりました。
主演はシャンソン歌手としても有名なシャルル・アズナヴール。
実は彼は歌手だけではなく、映画俳優としても高く評価されていました。
「殺すな」と「殺せ」は対立ではない
ここが映画好きには面白いところです。
元ネタ
Don't shoot the pianist.
↓
フランス人の皮肉
Shoot the pianist!
つまり、
「真面目な格言」を「ブラックジョーク」に変えた
だけなのです。
フランス文化らしい、少し意地悪で洒落た言葉遊びですね。
業界話
映画業界では、この言葉はさらに意味が変わっています。
映画や演劇では、
「現場スタッフを責めるな」
という意味で使われることがあります。
例えば、
上映トラブルが起きても、
- 映写技師
- ピアニスト
- 演奏者
- 通訳
を責めても仕方がない。
「彼らは最善を尽くしている」
という意味です。
日本でも
「メッセンジャーを撃つな」
という言い回しがあります。
悪い知らせを伝えた人を責めても意味がない、ということですね。
文学的な面白さ
この表現は、
「芸術家は事件の原因ではない」
という象徴にもなっています。
だからミステリーでは逆に、
「じゃあ、その芸術家が事件の中心だったら?」
という逆転がよく使われます。
例えば、
- 演奏家が犯人
- 作家が黒幕
- 画家が証拠を残す
という設定は、この「ピアニストを撃つな」という常識を裏返す快感があるため、映画や小説で繰り返し用いられてきました。
音楽業界への影響
1973年にはエルトン・ジョンが
Don't Shoot Me I'm Only the Piano Player
というアルバム名を付けています。
これは映画と古いジョークの両方を知っている人なら思わず笑ってしまう、「二重の引用」になっています。
ちょっとした雑学😊
映画好きの間では、
「Don't shoot the pianist.」は"作品そのものではなく、表現者をむやみに責めるな"という比喩として使われることがあります。
映画がつまらなくても、 「俳優だけを責めるな」「作曲家だけを責めるな」という意味合いで冗談交じりに引用されることもあり、100年以上たった今でも映画文化に生き続けている名フレーズなのです。
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