その連想は、結構面白いですね。
『心狸学・社怪学』は、タイトルからして「心理学・社会学」をもじったものです。内容は心理学や社会学の教科書ではなく、それらの用語を借りて、人間や社会をブラックユーモアやSFで風刺した短編集です。
例えば、
- 「条件反射」
- 「議会制民主主義」
- 「マス・コミュニケーション」
- 「未来都市」
といった、一見すると学術用語や社会科学の言葉がタイトルになっていますが、中身は筒井康隆流のナンセンスや皮肉が展開されます。
あなたが前に話していた、
「何か違うなと思ったら早めに反応したい」 「知らない人が放っておいてくれないように感じる」 「暗号みたいに聞こえる」
という話とも、少し接点があります。
筒井作品では、「人間は意味のないものにも意味を見つけようとする」「集団やマスコミが勝手に物語を作ってしまう」というテーマが繰り返し出てきます。だから読んでいると、「ああ、人間ってそういうふうに考えてしまうよな」と笑いながら考えさせられることがあります。
雑学ですが
1970年代は、日本でも「心理学」「社会学」「精神分析」の言葉が一般にも広まり始めた時代でした。フロイトやユングの名前が雑誌にも出るようになり、「コンプレックス」「ナルシシズム」などの専門用語が流行語のように使われていました。
筒井康隆は、その流行をそのまま受け入れるのではなく、「学問をありがたがりすぎる風潮」や「専門用語だけで賢そうに見せる態度」もまとめて笑いの対象にしました。だからタイトルは学術的でも、中身はかなり毒があります。
あなたが先ほど、
「ポエムのような言い回しを賢いと言う人がうるさい」
と言われたのも、少し筒井作品に通じるところがあります。筒井は、「もっともらしい言葉」を疑う作家でもあります。
だから彼の作品は、「教訓を与える文学」というより、
「その理屈、本当にそうなの?」
と、読者に突っ込みを入れさせるタイプの作品なんですね。
今読み返すと、時代背景が古い部分もありますが、「専門用語が独り歩きする」「権威ある言葉に人が引きずられる」という風刺は、今でもあまり古びていないと感じる読者は少なくありません。
『心狸学・社怪学』の「マス・コミュニケーション」と「未来都市」について、確認できる範囲で詳しくまとめます。 全体として1969年頃の雑誌連載をまとめた連作短編集(講談社単行本1969年、文庫化1975年以降)で、心理学・社会学の用語をタイトルに借りたブラックユーモア/スラップスティックの14編です。学術的な分析ではなく、人間や社会の醜さ・愚かさを下品でどぎつい笑いに落とし込む作風が中心です。
「マス・コミュニケーション」(社怪学篇)
親の遺言(家訓)で「生涯に二千人の女性を抱く(二千人斬り)」ことを使命づけられた男が主人公です。彼はマスコミの力を利用しながらその悲願を達成していきます。マスコミに翻弄されつつも、結果として目的を果たすという筋で、マスコミに踊らされる大衆の愚かさ・大衆迎合の構造を風刺しています。
読者感想でも「二千人斬り」という馬鹿馬鹿しい設定が印象に残り、筒井が繰り返し扱うマスコミ批判の系統(『おれに関する噂』などの前駆・類縁)として挙げられます。下品・エロティックな要素が強く、全方位を叩き斬るブラックユーモアの典型例です。現代の情報環境や炎上構造を連想させる部分もありますが、当時の文脈ではテレビ・週刊誌などのマスメディア批判が主です。
「未来都市」(社怪学篇)
会話文を中心に進行する作品で、役所ののらりくらりとした対応を痛烈に皮肉っています。主人公の自宅に向かって「通底車」(地下を通る車両?)の工事が始まっているのに、許可した覚えも説明もない。苦情を何度も何度も役所に電話をかけるが、たらい回しや言い訳ばかりで解決しない、という構図です。地下住宅や都市計画をめぐるお役所仕事がテーマで、個人と体制の乖離を描いています。
読者からは「白眉」「会話劇として優れている」「現実の会話の理路整然としていない感じをよく捉えている」と評価されることが多く、『鍵』(筒井自選恐怖小説集)にも再録されています。不気味さや不条理さを伴う点で、単なる笑いを超えた印象を残す一編です。当時の成田空港建設強制代執行などの社会背景を連想させる読者もいます。
その他の主な収録作の概要(確認できた範囲)
心狸学篇(7編)
- 条件反射:交通事故で瀕死の作家がブタ・イヌ・ウマの臓器を移植され、動物の特徴が行動に表れる。マスコミや周囲の好奇・人権侵害が強調される。
- ナルシシズム:美女セクサロイドを買った男の災難。
- フラストレーション:男性がオナニー全盛の時代になり、妻の欲求不満が募る。
- 優越感:団地住民と一戸建て住民の対立がエスカレートする大決闘。
- サディズム:女優そっくりのアンドロイドだと思って暴行したら本人だった、といった展開。
- エディプス・コンプレックス:女性嫌いの患者が精神分析医と精神内部を旅する。
- 催眠暗示:青山墓地での行為後、脱いだステテコが宇宙空間のTV中継に映る騒動(マスコミ騒動もの)。
社怪学篇(残り)
- ゲゼルシャフト:銀行強盗の主犯が警察に逃げ込み、捜査担当になるなど組織の自己維持を風刺。
- ゲマインシャフト:マンション住民が一種の家族として秘密を共有する不気味な共同体。
- 原始共産制:東大安田講堂事件を踏まえ、封鎖された東大が数十年後も原始共産制的共同体として存続する歴史改変風。
- 議会制民主主義:事故で脳死した大臣たちの脳がゴリラ・オットセイ・ウマに移植され、タレント国会で大暴れ。
- 近代都市:線路際に引っ越した夫婦が、列車からぶちまけられる屎尿を浴びるスカトロジー的ドタバタ。
全体としてエログロナンセンスが強く、現代の感覚では女性描写などに古さや不快感を覚える読者も少なくありません。一方で、人間の欲望・組織の自己保身・マスコミと大衆の関係といったテーマは今も通じる、という評価が目立ちます。初出は1969年頃の雑誌連載で、当時の社会問題(学生運動、住宅難、マスコミ、移植医療など)を誇張した現実延長の笑いとして読まれていました。
特定の編についてもっと深掘りしたい場合や、他の筒井作品との比較などがあれば教えてください。詳細なあらすじはネタバレを避けつつ、読者感想ベースでまとめています。
- ゲゼルシャフト:銀行強盗の主犯が警察に逃げ込み、捜査担当になるなど組織の自己維持を風刺。
- ゲマインシャフト:マンション住民が一種の家族として秘密を共有する不気味な共同体。 ーーーーー これは、ドイツ語でしたっけ?、意味は、何でしたっけ?、
① ゲマインシャフト(Gemeinschaft)
ドイツ語で、 Gemein(共通の、共同の)+ schaft(状態・結びつき) というイメージです。 日本語では、 「共同社会」 「共同体」 「血縁・地縁・友情などによる自然な結びつき」 と訳されます。 例:- 昔の村
- 家族
- 近所付き合い
- 仲間集団
- 愛情
- 習慣
- 信頼
- 伝統
② ゲゼルシャフト(Gesellschaft)
こちらは、 Gesellschaft=社会、組織、関係 という意味です。 日本語では、 「利益社会」 「機能的な社会関係」 などと訳されます。 例:- 会社
- 大都市
- 国家機関
- 契約関係
③ 面白いところ:どちらが良い悪いではない
テンニースは、 ゲマインシャフト=良い ゲゼルシャフト=悪い と言ったわけではありません。 人間社会には両方必要です。 例えば、 家族 → ゲマインシャフト的 病院 → ゲゼルシャフト的 趣味の仲間 → ゲマインシャフト的 大企業 → ゲゼルシャフト的 という感じです。④ ご提示の例が面白い理由
銀行強盗の主犯が警察に逃げ込み、捜査担当になるこれは「ゲゼルシャフト」の皮肉ですね。 本来、警察は合理的な制度(組織)ですが、制度を維持することが目的化すると、 「組織を守るためなら矛盾も起こる」 という風刺になります。
マンション住民が一種の家族として秘密を共有する不気味な共同体これは「ゲマインシャフト」の影の部分ですね。 ゲマインシャフトは温かい一方で、
- 内輪意識
- 同調圧力
- よそ者排除
- 秘密の共有
⑤ 現代で考えると面白いです😊
SNSも実は両方の性質があります。 趣味のオンライン仲間 → ゲマインシャフト的 巨大プラットフォーム企業 → ゲゼルシャフト的 です。 つまり現代社会は、 「昔ながらの人のつながり」と 「合理的な巨大システム」 が混ざった世界なんですね。 ちなみに、英語でも似た考え方で community(共同体) と society(社会) という対比がありますが、テンニースのこの2語は社会学の基本用語として今でも大学の授業などで扱われています😊「マス・コミュニケーション」(社怪学篇)
親の遺言(家訓)で「生涯に二千人の女性を抱く(二千人斬り)」ことを使命づけられた男が主人公です。彼はマスコミの力を利用しながらその悲願を達成していきます。マスコミに翻弄されつつも、結果として目的を果たすという筋で、マスコミに踊らされる大衆の愚かさ・大衆迎合の構造を風刺しています。
読者感想でも「二千人斬り」という馬鹿馬鹿しい設定が印象に残り、筒井が繰り返し扱うマスコミ批判の系統(『おれに関する噂』などの前駆・類縁)として挙げられます。下品・エロティックな要素が強く、全方位を叩き斬るブラックユーモアの典型例です。現代の情報環境や炎上構造を連想させる部分もありますが、当時の文脈ではテレビ・週刊誌などのマスメディア批判が主です。
「未来都市」(社怪学篇)
会話文を中心に進行する作品で、役所ののらりくらりとした対応を痛烈に皮肉っています。主人公の自宅に向かって「通底車」(地下を通る車両?)の工事が始まっているのに、許可した覚えも説明もない。苦情を何度も何度も役所に電話をかけるが、たらい回しや言い訳ばかりで解決しない、という構図です。地下住宅や都市計画をめぐるお役所仕事がテーマで、個人と体制の乖離を描いています。
読者からは「白眉」「会話劇として優れている」「現実の会話の理路整然としていない感じをよく捉えている」と評価されることが多く、『鍵』(筒井自選恐怖小説集)にも再録されています。不気味さや不条理さを伴う点で、単なる笑いを超えた印象を残す一編です。当時の成田空港建設強制代執行などの社会背景を連想させる読者もいます。
その他の主な収録作の概要(確認できた範囲)
心狸学篇(7編)
- 条件反射:交通事故で瀕死の作家がブタ・イヌ・ウマの臓器を移植され、動物の特徴が行動に表れる。マスコミや周囲の好奇・人権侵害が強調される。
- ナルシシズム:美女セクサロイドを買った男の災難。
- フラストレーション:男性がオナニー全盛の時代になり、妻の欲求不満が募る。
- 優越感:団地住民と一戸建て住民の対立がエスカレートする大決闘。
- サディズム:女優そっくりのアンドロイドだと思って暴行したら本人だった、といった展開。
- エディプス・コンプレックス:女性嫌いの患者が精神分析医と精神内部を旅する。
- 催眠暗示:青山墓地での行為後、脱いだステテコが宇宙空間のTV中継に映る騒動(マスコミ騒動もの)。
社怪学篇(残り)
- ゲゼルシャフト:銀行強盗の主犯が警察に逃げ込み、捜査担当になるなど組織の自己維持を風刺。
- ゲマインシャフト:マンション住民が一種の家族として秘密を共有する不気味な共同体。
- 原始共産制:東大安田講堂事件を踏まえ、封鎖された東大が数十年後も原始共産制的共同体として存続する歴史改変風。
- 議会制民主主義:事故で脳死した大臣たちの脳がゴリラ・オットセイ・ウマに移植され、タレント国会で大暴れ。
- 近代都市:線路際に引っ越した夫婦が、列車からぶちまけられる屎尿を浴びるスカトロジー的ドタバタ。
全体としてエログロナンセンスが強く、現代の感覚では女性描写などに古さや不快感を覚える読者も少なくありません。一方で、人間の欲望・組織の自己保身・マスコミと大衆の関係といったテーマは今も通じる、という評価が目立ちます。初出は1969年頃の雑誌連載で、当時の社会問題(学生運動、住宅難、マスコミ、移植医療など)を誇張した現実延長の笑いとして読まれていました。
特定の編についてもっと深掘りしたい場合や、他の筒井作品との比較などがあれば教えてください。詳細なあらすじはネタバレを避けつつ、読者感想ベースでまとめています。
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